さて、ようやく「十神」のうち「食神・傷官」の話を終えまして、今日はいよいよ「比肩(ひけん)」の話に入ります。
実は本にも書きましたが、十神を理解するうえで最初に知っておきたいのがこの「比肩」の特性なんですね。
まず用語から整理します。前にも言いましたが、「比肩」は「劫財(ごうざい)」とセットで「比劫(ひごう)」と言ったり、単に「比(ひ)」と略されることもあります。書籍などでは「比肩」と「劫財」をまとめて扱うことが多い。意味としてはどちらも「自分(=日干)」と同じ五行(かつ陰陽も同じor違う)を指し、「仲間・同類・競争相手・兄弟姉妹・同僚」などを象徴します。
ここでよくあるのが、「自分(男)にとって比肩は、同じ男で性質が似ている人。自分(女)なら同じ女で、似たような性質の人」とざっくり説明されたりします。でも実際には、陰陽の差もあるし、個々の五行(甲か乙か、丙か丁か…)の違いもあって、単純に「同性だけが比肩」とは限らない面があります。そこはあまり深く突っ込まず、とにかく「似た属性で、場合によっては自分の立場を脅かす存在になりやすい」というくらいで考えていただければOKです。
比肩がない人にも「比肩的な」傾向が出る?
「私の四柱には比肩が一つもないのに、なんだか比肩っぽい行動をするんだよな」というケースがあります。
それは「運(大運・流年)で比肩が巡ってきたとき」だったり、他の十神を経由して比肩に似た作用が強まる場合があるんです。だから、「四柱に比肩がない=絶対に比肩的にならない」というわけではありません。
比肩の典型的なイメージ
- 兄弟姉妹・友人・同期・同僚・競争相手
- 自分と同じ立場や性質を持つ存在を指します。男性・女性問わず「同性を中心とする仲間」を意味することが多い。
- 競争心、または協力関係
- 競争心が強い(相手に負けたくない)とか、逆に「同じ立場同士で組んで協力する」といったイメージ。
- どちらに転ぶかは、その人自身のバランスや他の十神との絡みしだいです。
- 自尊心が高い
- 比肩が強く働くと「俺(私)が一番だ」「オレ様最高」といった自信やプライドにつながりやすい。
- 逆にそれが行きすぎると「頑固」「扱いにくい」と思われることもあります。
- 家族や友人の問題、特に金銭的トラブル
- 比肩とお金に関する星(財星)が絡むと、「金銭をめぐる兄弟トラブル」や「友人にお金を貸して取りっぱぐれる」などの暗示が出ることも。
- もちろん必ずそうなるわけではないですが、「比肩が強い人は、親しい人にお金を貸したり借りたりするとき要注意」みたいなセオリーが名理学ではよく言われます。
- 社交・人付き合いの特徴
- 比肩があると一見社交嫌いに見える人もいる一方で、いざ仲良くなるとめっちゃフレンドリーだったり。「外では警戒するけど、身内(仲間内)にはめっちゃ心を開く」みたいなパターンが出やすいと言われます。
- 競争相手や敵には「絶対負けたくない」と闘争心をむき出しにすることもあれば、同僚や親友には「俺たち仲間だ」と熱く共闘するイメージ。
- 経済的な視点
- 比肩がからむと「財を取り合う」「共同で使う」「シェアする」といった事象も起こりやすい。
- うまく働けば「出資者との共同ビジネス」、下手すると「お金をむしり取られる」など両極端になりがち。
以上がだいたい比肩にまつわるキーワードです。「劫財(ごうざい)」との違いなどは、また後で解説しますが、とにかく「自分と似た属性をもつ人間との関係性」でトラブルになりやすい反面、その関係がプラスに働くこともある、と理解しておくといいでしょう。
もう少し深い解釈
比肩は、「何かを分割・シェアする」「分離する」「自己主張が強い」などを象徴すると言われます。たとえば運勢で比肩が巡ってくると、下記のような出来事が起こりやすいとされるんですね。
- 分離・離別
- 夫婦や恋人が別れる(誰かと決定的に距離ができる)
- 会社を辞める、チームを抜ける
- 独立起業する
- 相続問題が起きて、財産を分割する
- プライド・競争心・強い自己主張
- やたら主張し合ってケンカが絶えない
- 周囲が「なんかあの人、妙に気が強いな…」と感じる
ただ一方で、比肩は「自分と似た存在との協調」「意気投合して助け合う」ことも意味するので、正反対の現象もあります。
- バンドメンバーや共同経営者を得る
- 兄弟姉妹と一緒に事業を始める
- 親友や同志を得て一緒に動く
要は「似た者同士」がガッチリ組めるか、それともぶつかってしまうか、どちらかになりやすい性質だということです。
比肩の人は社会に出てからが勝負
比肩が強いと(あるいは比肩が運で回ってくると)、子ども時代や学生時代に「競争心が芽生えすぎてしんどい」「兄弟姉妹やクラスメイトとの確執が多い」などの傾向が出ることがあります。だから「家を出る(独立する)までが大変」なんて言われたりもする。
ただし一度社会に出てしまえば、「自分と似たような志を持つ仲間を見つけて共闘する」「持ち前の競争心でグイグイ伸びる」などポジティブに働くことも少なくありません。だから「自立してから本領発揮するタイプ」の人が多い、というのが古典でもよく言われるわけです。
比肩が「無い」とどうなる?
「四柱に比肩が一つも無い」という場合、シンプルに言えば「競争心があまり表に出ない」「あっさりしていて人と張り合わない」傾向があるとも言えます。
ただし先ほど述べたように、別の要素(流年・大運など)で比肩に似た星が巡ってくると一時的に「競争心が急に高まる」「友人と対立する」といったことが起きる場合もあるので、あくまで「四柱に比肩が無い=一生競争とは無縁」ではありません。
女性の比肩
女性の場合、「比肩が多いと結婚運が…」というような話がよくあります。たとえば「旦那の星(官星)を克する」とか、「他の女性(夫にとっての小三)にとってはライバル星」だとか、いろいろ言われますが、それをそのまま鵜呑みにする必要はないでしょう。
ただ、「女性の中に男性的競争心・自我の強さが際立つ」と解釈されがちではあります。すると「周囲の女性とぶつかりやすい」「恋愛や結婚において、同棲や協調よりも自分の主張が先に立ちやすい」などの現象が出るかもしれません。もちろん、それを逆手に取ってキャリアを築く方も多いわけです。
まとめ
- 比肩は「似た者同士」の関係性を表しやすい星。
- 競争・協力、どちらにも転びやすい。
- ときにお金や地位をめぐって揉めるし、ときには同士として共闘する。
- 強い自己主張やプライドとして現れることも多い。
こうした性質は、「劫財(ごうざい)」ともかなり近い部分がありますが、劫財のほうがさらに攻撃性が強い、あるいは「陰陽の違い」を伴うなどと言われます。そこは別の機会にお話しするとして、とりあえず今日は「比肩とはこういうものだ」という前提を押さえてください。
次回以降、劫財や財星などの話も絡めながら、さらに具体的な事例をお伝えしたいと思います。
はい、では今日はここまでです。(音楽SE)
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以上が今回の訳文です。
ご不明点などあれば、お気軽にお知らせください。
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